「永遠の記憶」を読みました
8月5日に発売された、「永遠の記憶」を読みました。
発売直前に東野圭吾さんが亡くなったと報道され、結果的に遺作として発売されたこともあり、大きな話題になっているこの本。もともと東野圭吾さんの作品は家族で愛読していることもあり、読んでみました。
①この作品の中にあるトリックだけではなく、この作品そのものも、前振りとして利用して推理小説を構成した可能性がある、作者の遊び心
②中扉にあるように、登場人物の人生をなぞるという形を通して、生きてきた時代を振り返ること
おそらく、最後の作品になるだろうということはわかったうえで書いていたことも感じ取れますが、この二つを感想として挙げたいと思います。
東野圭吾さんの作品は、通常の推理小説とは違って、思い込みを利用したちょっと外した感じのトリックであったり、設定も少しひねっていたり、「少しずらす」ということが特徴の一つです。
今回も、それが十分に発揮され、決して長い作品ではありませんが、「少しずれていたことが積み重なった結果、一つの物語になる」という特徴は十分に感じ取れました。そのうえで、ガリレオシリーズの最後の作品として区切りをつけるにあたり、この作品から過去の作品へ逆方向につなげていくことで、シリーズのまとめとしています。
そしてまんまと引っ掛かり、過去の作品を読み返すわけですが、過去の作品を読んだところで、この本を読み終わったときに感じた、「やっぱり!」ではなく、読み返したところで、「あれ…ちょっと思っていたのと違う」となるところまで含めて、東野圭吾さんの作品らしくまとまっていると思いました。
そして二つ目。急速に時代が変わり、自分たちが若いころには普通だったことが今ではアウトになっていたり、良かれと思ってやっていたことが実はダメなことだったと後からわかったり。人生の区切りを意識すると、これまで歩んできた道を振り返りたくなることはあると思いますが、その振り返りを、作品の中に押しつけがましくなく隠していると思います。時代(というか、自分の人生)を振り返るということを裏のテーマにしている作品というと、最近見たものでは映画の「TOKYOタクシー」が思い浮かぶのですが、それに近いものを感じました。
この本を読んでほしいけど、さらに、良かったら他の(ある)作品も読んでね、という意図にこれ以上なく自然に誘導されてしまう、そんなトリックが仕掛けられている本でした。